Arch. Design Francesco Murano

Francesco-Murano_postフランチェスコ・ムラーノ氏(Francesco Murano)
建築家、デザイナー、ミラノ工科大学助教授

経歴
ミラノ・ドムスアカデミー修士取得、”Le figure della Luce”と題された論文で、ミラノ工科大学・工業デザイン博士号を取得。

環境とインテリア照明を中心としたフィールドで活動を行っています。彼の作品は、イタリアとヨーロッパの産業に重要な新素材の研究、美術展の照明、ランプの設計、モニュメントや建築照明、スタンド照明といったように、求められる照明によって活動領域が異なります。

彼はドムスアカデミー、台北デザインセンターの研究スタッフであり、欧州デザイン学会(ミラノ)の照明デザインのマスターコーディネーターも務めています。

ミラノ工科大学の助教授、ミラノ工科大学 “Luce e Colore” 研究室メンバー

Politecnico di Milano

 

Dialogue-Interview
Arch. Francesco Murano x Mr. Kumpei Kobayashi (Toshiba materials co., ltd.)
February 3rd, 2016 @ Palazzo Reale Milano

 

K: 現在の照明シーンは、どんどんLEDの人工的な光に取って代わられつつありますが、照明計画を手がける建築家として、ムラノさんはこの現状をどのように捉えられていますか?

M:少し前までは、LEDの技術的な問題があり、質が追いつていませんでしたが、最近では人に知覚される色彩の値(CRI)にも見られるように、大分改良されつつあると感じています。

展示会シーンにおいて見られる大きな特徴としては、LEDによってもたらされた最大の変化である寿命の延長により、メンテナンスの問題が大きく改善されました。ハロゲン電球においては、電球交換時に電球の種類選定に間違いが起こりやすく、同じ空間に異なる電球が存在するという問題が多々見られていました。

 

K: 今回TRI-Rの光源を実際に使われて、どのように違いを感じられましたか?

M: TRI-Rを使った時に一番感じたのは色味の違いです。CRIが高いという理由もありますが、暖かい光と冷たい光、色温度の違う2色の光源を混ぜて使った結果、色をどう知覚するかという感覚的なところで、全く違う結果が出てきたと感じています。色が明らかに輝きを持って出てきました。この理由はやはり、太陽光に類似した連続スペクトルであるところに帰すものだと考えます。

 

K: 私も全く同感で、連続スペクトルということは、どこの色を取っても不足がない、欠けていることがありません。それは、色が良くなると同時に、モノトーンの彫刻などでも質感が非常に美しく出るのではないかと期待しているのですが、その点についてはどう考えられていますか?

M:もちろん同じような効果が得られると思います。ただ、これを実施するためには、2つの色温度の光を当てるために、器具が二灯ずつ必要になります。しかし、実際の展示会では、これを実現するための予算を毎回確保することは難しいという現実があります。これは、私が将来に期待することですが、一つの器具で2つの色温度のLED光源が調合できるもの、もしくは、一枚のLEDチップで2つの色温度が調合されたもの、ができればと考えています。期待しすぎかもしれませんが、これによって、予算の面からも、展示会の照明環境が改善されるのではないかという希望をもっています。

 私は、2010年、ローマの美術館で開催されたホッパー展にて、今回の技術同様に、2つの色温度の光を混ぜて使う方法を実践しました。当時は、3000Kと4000Kのダイクロハロゲンランプを使用し、この方法の優位性については、その際に実感していました。しかし、今回同じ3000Kと4000KのLEDで実践し、このような結果が得られたことには、大きな進化を感じています。

 また、これは、LED照明計画デザイナーにとっても非常に有効な方法だと思っています。なぜなら、冷たい光と暖かい光を混ぜるという技術的な選択肢が生まれるからです。前述のホッパー展では、4000Kの光で作品を照らすというリクエストを受けましたが、そのほかの展示会では、2000~3000Kというリクエストを受けることがあります。光のグラデーションや混合を可能にする照明技術の存在は、光/照明によって照らし出される作品の解釈にも大きな優位性がもたらされると考えられます。

 

TRI-Rで照射された「La Giovinezza」について

K: この光源によって、この絵の何が素晴らしく出てきていると思われますか?

M: コントラストが非常に綺麗に浮かび上がって見えると思います。この絵は、特に、暖色と寒色を合わせたベージュが使われていますので、暖かい色と冷たい色のスペクトルが合わさることで、両者共に浮かび上がり、その結果、コントラストが綺麗にみえるというわけです。一方、隣の絵画と比べてみると、暖かい色の光だけで当てているために、赤みのある色調はよく出ていますが、寒色系の色調がうまく出てきていないという違いが、明らかにわかると思います。

 

K: 我々も二つの色を混ぜるのは、非常に有効な方法だと思っています。

M: はい、とても素晴らしい方法です。常に実行できるようにしたいですね。

 

K: この調光技術を実行する際に、絵を見ながら、その絵が一番ひき立つという組み合わせを、現場で見ながら調整することが重要ではないかと考えています。

M:私が、これまで個人的に行ってきた実験で、私が気に入っている光として、通常の(特別に赤や青の色彩に偏ったものがない)絵画においては、30lux程度の冷たい光、100lux程度の暖かい光というバランスがあります。

もちろん、光を合わせて使うことができるのであれば、絵に合わせて調整するのが一番好ましいと思っています。これは、照明において非常に大きな可能性をつくるものですし、また調光は、機械に頼るのではなく、実際に手で一つ一つ行って調整していくものです。

 

K: また、2色の光を同じ方向から当てる場合と、別々の方向から当てる場合がありますが、ムラノさんはどのようにその判断基準を考えられていますか?

M:これは絵によって変わってきます。絵画照明の一般的な課題でもあり、反射しやすい絵であれば、右と左から、距離をとって光を当て、交差させることで、光が絵の上を通過していくように設置します。それぞれの絵に適切な光がありますので、絵によって同じ方向から当てた方が良いか、クロスさせるのが良いか決まってきます。大きな絵であれば、クロスさせるのが適しています。

 例えば、「罪」という作品では、左右に大きな距離をとって照射しました。この絵に関しては、大きな額が問題になっていました。距離をとってクロスさせるところで、それぞれの光によってつくられる額の影を取りました。これによって、絵の中心部に額の影を落とすことなく絵画を鑑賞することができたのです。

 

K: これからもムラノさんの期待に応えられるように、新しい技術開発をしていきますので、これからもぜひ長いおつきあいをさせていただければと思います。

M: ぜひ喜んで。イタリアには美術館がたくさんありますし、今ちょうどハロゲン電球からLEDに移行する重要な時期を迎えていて、導入するには最適な時期にあると考えています。